2007年7月5日。
谷口正樹さんの畑に向かった。
分刻みのスケジュールの中、パッションフルーツの収穫直前の出来をどうしても、この目で確認したかったのだ。
谷口さんとは長い付き合いだ。
いつになく元気がないのが手に取るように分かった。1時間ほど話をしたが、どうもすっきりしない。美味しさは充分あがっているのに。
翌日、なんとか1時間ほど時間をとって、谷口さんの畑へ向かった。パッションフルーツのハウスの中は気温35度。外気とそれほど変わらないが、やはり汗をかく。
前日とあわせて、4棟のハウスを回った。最後に、自慢の平張りハウスを回ったときに、谷口さんの元気が出ない理由が分かった。
春(4月下旬〜5月中旬)の低温のため、平張ハウスのパッションフルーツの肥大が進んでいなかった。他のハウスは問題なく生育しているが、このハウスだけは小玉傾向が顕著だった。
小玉とはいえ、身の詰まりはしっかりしている。小ぶりなため、多少、酸が強いかもしれないが、美味しさは充分に期待できる。だが、1個あたり70グラム程度(Lサイズで80グラム程度)のMサイズが多い。これが谷口さんの悩みだった。
土を活かし、根を這わせ、たくましい葉を作った。でも、自然には勝てないのだ。
農業をもう辞めたいと思った事は何度もある。
時折、谷口さんが漏らす言葉だ。だが、そのたびごとに、強い意欲で農業に取り組んできた。
人の力、技術、知識、ノウハウ。
こういったもので対処できない時。
精一杯やったら、後は運を天に任せるしかない。
天に唾をしてもどうにもならない時。
乗り越えていくしかないのだ。
谷口さんが奄美大島に移住して8年になる。妻の正子さんを連れて、農業を始めて7年。きゃしゃな正子さんの手が、土にまみれ傷だらけになるのを見るのが忍びなかった。
それでも、懸命に農業に取り組み、何もないところから次々と独自のノウハウを蓄積していった。いまでは、奄美大島を代表するパッションフルーツ農家の一人になった。
施設栽培では、みなから一目置かれる存在になった、でも。
自然の力の前では、どうにもならない事がある。
この夏、谷口さんがパッションフルーツに賭ける意欲は並々ならぬものがあった。春(3月)には念願のマンゴーハウスを建て、マンゴーの栽培にも取り組みはじめた。
マンゴーの収穫は早くて来年・順調に収穫できるのは3年後になる。だからこそ、今年はパッションフルーツを売り、収入を得たいのだ。
樹勢を考えると、また、ラニーニャ現象を考えると、この冬、パッションフルーツの収穫は期待できない。
嘆いていても先へは進めない。
相変わらず、物は良い。ただ小さいだけだ。通常の流通では、サイズが小さいというだけで商品価値は大きく下がるが、全国のみなさんへ産直で届けるネット販売では、美味しさの質を守れれば、サイズの大小は、さほど気にする事はない。
とにかく、規格外品(小玉)のパッションフルーツを、できるかぎり販売しよう。やれるだけやって、結果が伴わなければ、そのとき、考えよう。
もっとも大切な事は、お客様へウソをつかないこと。
確かに小玉は多いが、美味しさは充分に上がっている。
僕にとっても、谷口さんにとっても、挑戦の夏が始まったところだ。
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谷口さんの奄美パッションフルーツ
天を相手に己を尽くし、我が誠の足らざるを尋ぬべし