「我慢の年」次へ(奄美新聞2012年1月23日)
龍郷町浦にある果樹園に足を運んだ。山の裾野の小高い丘にある。この立地環境が集中豪雨による土石流被害につながった。果樹園を所有するのは専業農家の岡山俊一さん(49)。昨年10月以来、ほぼ2カ月ぶりに訪ねた円には多くの示唆があった。
岡山さんの果樹園の被害は2年連続になる。なかでも昨年9月下旬の北部豪雨災害が深刻だった。前年の豪雨で山の地盤は弱体化していた。そんな状態で再び襲った豪雨。果樹を取り囲む山の4カ所で大規模崩壊があり、そこから流出した土石流でタンカンの成木が100本余りも埋まった。被害面積は約240アールに及んだ。岡山さんは振り返った。
「周辺の山は、粘土質の泥岩層のため地盤が弱い。前年以上の局地的な大雨で、山が動くような崩壊がおきた」。
被害果樹園は災害復旧事業の対象になった。町の担当課が窓口になり行政の支援のもと復旧工事が行われた。重機による土石流の除去や排水の確保といった工事は年末まで続いた。岡山さんは除去作業の際、樹木に傷がつくことがないよう見守り、細部の作業は水ら乗り出した。1.6メートルの高さで2カ月間に渡り成木を覆った土石流。生産量や品質への影響が懸念されたが、土石流は礫中心だったのが幸いした。通気性があるため、樹木の根は“呼吸”できる状態にあった。
現在、タンカンは収穫目前だ。復旧工事が施されたことで通常の栽培環境を取り戻しているように見える果樹園。岡山さんは首を振る。「着果状態は平年に比べて3〜4割少ない。傷果も多い。品質の方は糖度の伸びが気になる。秀品率が落ちるのは避けられない。」
タンカンの量・品質の低下は岡山さんの果樹園だけの問題ではない。奄美大島全体の生産量は平年(1千トン強)の2〜3割程度と著しい減産となる見通しだ。JAの共販量は過去最低の25トンを見込んでいる。
「不作」の要因として季節外れの5月下旬の台風2号による潮風害があり、台風通過後に降雨なしが続いたのも被害を拡大させた。品質も糖が低く、クエン酸が高い傾向にある。最終となる今月18日の果実品質分析では平均糖度10.2度、クエン酸の平均は1.21%だった。生育は遅れ気味で、収穫のピークは来月中旬以降にずれ込みそうだ。
多くのタンカン農家は今季、経営を左右するほどの試練に立たされている。岡山さんは悲観するだけでなく次を見据える。「我慢の年だと考えている。台風や豪雨などの『気象災害は常にある』と受け止めたい。それを乗り越える防災営農を心がけ、実践していきたい」。この決意は既に実行されている。
岡山さんの果樹園内にはビニールを被せた堆肥が運び込まれている。知り合いの畜産農家から取り寄せたものだ。自ら完熟にも取り組むことで堆肥購入のコストを抑制している。災害後、岡山さんは樹木の手入れに全力をあげている。土壌改良用資材の投入、夏秋梢の整理、暴風垣の整備も。土づくりに役立つ有機物として重視している堆肥の投入は、収穫後に行う。こうした作業を徹底することで災害に強い果樹園づくりを目指している。
気象災害が産地づくりに立ちはだかる中、果樹農業の中核となる施設の整備が進められている。タンカンなど奄美大島内の果樹選果を一元化する「奄美大島選果場」だ。施設建設が昨年末着工され、今年5月には完成する。その後、光センサーなどの選果機器が導入され、来年のタンカン収穫から利用できる。最新の選果機器による品質保証が奄美産地でも実現する。
それにより「奄美たんかん」のブランド化が期待されるが、選果場はあくまでも手段だ。産地全体の量や質が安定しない限り選果場は目的を果たせない。まずは岡山さんの言う「我慢の年」を認識し、防災営農に必要な行動へ踏み出したい。
(徳島 一蔵)

奄美新聞(2012年1月23日)記載記事
「我慢の年」耐えるではなく、前へ進む。
強く、前向きな岡山さんの姿は私に、大切な事を伝えてくれました。
今年の奄美たんかんは数が少なく、多くの農家さんが苦労されています。それでも前へ進む農家さん。農家さんと足並み揃えて乗り越えていきたいと思います。
いつも有難うございます!
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